「ある光」について

「ある光」は日刊建設工業新聞社の記者・阪本繁紀さんが2024年に出版した長編漫画です。福島県いわき市の薄磯地区を舞台に、東日本大震災発生前の2010年から、同地区の復興事業が完了した2021年までを描きます。

入念な取材で確認した史実を、同市に住む高校生・佳文(かや)の視点で見ていく内容で、東日本大震災の追体験が可能になっています。被災体験だけでなく、佳文が悲しみを乗り越え、再び前を向いて歩む姿も丁寧に描いています。

南海トラフ巨大地震で大きな被害が予想される和歌山県串本町で育った阪本さんは、今後津波被害に向き合う地域の人たちに、何らかの「心の指針」を届けたいと思い、「ある光」を制作したといいます。

(詳細については阪本さんへのインタビュー記事もご参照ください)

(「ある光」の書籍版はヤマニ書房〈福島県いわき市〉コウド舎〈同浪江町〉、NPO法人スターズアーツのECサイト、および阪本さん運営のBOOTHで購入できます)

2010年、主人公たちが部活動に打ち込むシーン

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震のシーン

押し寄せる津波のシーン

福島第一原子力発電所事故のシーン

避難所のシーン

自衛隊による救助活動のシーン

主人公たちが、津波が引いたあとの自宅を訪れるシーン

震災後の経過を描くシーン

エンディング

NPO法人スターズアーツについて

NPO法人スターズアーツ(東京都港区、本宮透雄理事長)は東日本大震災被災地への教育支援に取り組んでいた任意団体を母体とし、2022年に設立されました。

本宮理事長が所属する日本大学芸術学部のノウハウやネットワークを駆使して、舞台演出の手法を交えた被災体験の伝承に取り組んでいます。

(詳細については日刊建設工業新聞もご参照ください)

2023年8月に文京シビックホール(東京都文京区)で開催した「forever 〜決して忘れてはいけない あの時〜2023刻キザム」の様子

舞台化プロジェクトの始動

阪本さんが「ある光」の書籍版を、スターズアーツに送ったのがきっかけで、両者がつながりました。

「ある光」の物語を、スターズアーツのノウハウやネットワークを駆使して舞台という空間の中に創り上げれば、観客にイメージを思い浮かばせ、心情の移り変わりも含めた、被災の追体験が可能になるのではないか。

そして主人公が再び前を向いて生きる様は、災害列島で生きる私たちにとっての世界への向き合い方に、何らかのヒントを与えてくれるのではないか。

こうした期待から、劇作家・演出家の村上秀樹さんに脚本執筆を依頼したところ、ご快諾をいただき、舞台化プロジェクトが始動することになりました。

(詳細については阪本さんと本宮理事長の対談記事もご参照ください)

舞台公演「ある光」製作委員会の主要メンバー

本宮透雄理事長


日本大学芸術学部勤務(専門分野:舞台照明〈演劇、日本舞踊〉、日本劇場史、民俗芸能、沖縄組踊)
NPO法人スターズアーツ理事長
NPO法人日本ドミノ協会理事長

1985年日本大学芸術学部卒。コープサービス芸能部を経て89年日本大学芸術学部入職。2011年任意団体スターズアーツ設立、22年スターズアーツをNPO法人に移行、理事長就任。24年防災士、東京都防災コ―ディネーター取得。25年東京都災害時支援ボランティア(練馬区)登録、東京大学生産技術研究所附属災害対策トレーニングセンター(DMTC)災害対策士C級取得。

阪本繁紀氏


和歌山下津漫画制作同好会主宰
日刊建設工業新聞社記者

2005年串本町立橋杭小学校、08年智辯学園和歌山中学校、2011年智辯学園和歌山高等学校卒。14年中央大学漫画制作同好会(現和歌山下津漫画制作同好会)設立。16年中央大学法学部卒、和歌山県庁入庁。港湾空港局で南海トラフ地震を見据えた津波対策などを担当。「わかやま結婚・子育て応援企業同盟参加企業紹介BOOK」の巻頭漫画を担当。20年日刊建設工業新聞社入社。国土交通省記者クラブ等で勤務しつつ東北地方を取材し、24年「ある光」を出版。

村上秀樹氏


劇作家・演出家
演劇ユニット回転OZORA主催
DramaCreationREnga代表

1992年より劇作家・演出家として活動。人生の悲喜こもごもを舞台上で表現するべく、さまざまな角度からアプローチを続けている。自団体・回転OZORAの作品のみならず、他団体での演出・執筆も多数手掛ける。

【作品履歴】
回転OZORA「あやかし相談、承り〼。萬屋ツジモリ」作・演出
回転OZORA「黄昏の笑顔」作・演出
青年劇場「博士の愛した数式」演出(作:福山啓子、原作:小川洋子)
劇団だるま座「怪盗先生、教団に立つ。」作・演出
東京アンテナコンテナ「ハイリスクHighSchool」劇作
劇団ダルメシアン「ひとごと。。」演出(作:坂本鈴)
ほか多数。

私たちは舞台公演「ある光」を、南海トラフ地震をはじめ今後予想される自然災害への備えとして、一つの「防災道徳」の形を発信する新たなコンテンツに仕上げたいと考えています。

東日本大震災の発生から15年となる2026年3月ごろの初演を目指し、現在準備を進めています。上演は東北地方(仙台市、福島県いわき市)や東京都内、和歌山県内などを想定しており、決まり次第ご報告させていただきます。

プロジェクトの詳細はプレスリリースをご参照ください。

【活動趣意書】舞台公演「ある光」製作委員会の設立に当たって

 

  2011年の東日本大震災は戦後最大の自然災害であっただけでなく、多くの人の世界観を揺るがし、行動へと駆り立てた出来事でした。「自分が東北地方のためにできることは何か」を一人一人に真剣に考えさせ、それぞれが自分の立場でできることに懸命に取り組みました。NPO法人スターズアーツ(東京都港区、本宮透雄理事長)では、被災体験の語りに音楽などの演出効果を加え、伝承の効果を一層高められるよう、この13年間さまざまな方々のご助言を賜りながら模索を続けてきました。

 あれから14年がたち、東北地方ではハード整備を主とする復興事業がほとんど完了しました。福島第一原子力発電所の廃炉の問題は残るものの、官民の関係者のご尽力により、社会は一定の落ち着きを取り戻すことができました。

 それと並行して14年という歳月は、確実に忘却を招きつつあります。東北地方以外の多くの人々にとって、東日本大震災はテレビで見た映像にとどまり、その記憶も大きく薄れてきています。また、震災後に生まれた世代が社会に占めるウエートも年々増えています。南海トラフ地震による新たな津波被害が迫る中、東日本大震災を経験していない地域や世代に、一層効果的に経験を伝え、被災に備えてもらうための伝承手法が強く求められています。

 こうした中で私たちは、漫画「ある光」に出会いました。「ある光」は日刊建設工業新聞社の記者・阪本繁紀さんが制作した長編漫画です。福島県いわき市を舞台に、同市に住む高校生の視点から、東日本大震災を追体験していく内容となっています。入念な取材に基づいて正確に史実を伝えており、幅広い世代に向けた有効な伝承ツールになると考えました。それにもまして、主人公が被災を乗り越え、再び前を向いて生きる姿から、「生きていく」ことへの強い希望を感じさせる作品でした。

 この作品を、スターズアーツのノウハウやネットワークを駆使して舞台という空間の中に創り上げれば、観客にイメージを思い浮かばせ、心情の移り変わりも含めた、被災の追体験が可能になるのではないか。そして主人公が再び前を向いて生きる様は、災害列島で生きる私たちにとっての世界への向き合い方に、何らかのヒントを与えてくれるのではないか。こうした期待から、劇作家・演出家の村上秀樹さんに脚本執筆を依頼したところ、ご快諾をいただき、舞台化プロジェクトが始動することになりました。

 私たちは舞台公演「ある光」を、南海トラフ地震をはじめ今後予想される自然災害への備えとして、一つの「防災道徳」の形を発信する新たなコンテンツに仕上げたいと考えています。東日本大震災の発生から15年となる26年3月ごろの初演を目指し、現在準備を進めています。上演は東北地方(仙台市、福島県いわき市)や東京都内、和歌山県内などを想定しており、決まり次第ご報告させていただきます。

 東日本大震災で被災された方々の思いを改めて胸に刻み、再度被害の最小化につなげるため、誠実に取り組みを進める所存です。何卒ご理解の上、ご指導・ご鞭撻を賜れますようよろしくお願いいたします。

2025年4月11日 舞台公演「ある光」製作委員会一同 

舞台公演「ある光」製作委員会(事務局 : NPO法人スターズアーツ)
東京都港区北青山1-6-1-118
TEL : 03-5413-8055
MAIL : [email protected]